「あ、あの…?」
「ん?」
おずおずと声を掛けた私に向かって、不思議そうな顔を向ける瑠衣斗。
えー…っと…?
どうやら私は浴衣を着せられるらしい。
なんだか気恥ずかしいし、改まってそう決められてしまうと、何だか口ごもってしまう。
まさか浴衣を着るなんて、思ってもみなかったし……。
その時、ふいに感じた視線を辿ると、何やら含み笑いをした由良さんと目が合った。
………なんだろ。
何故そんな表情をしているかも分からないし、むしろ考えない方がいいのかもしれない。
「おーい、由良」
「はあーい?」
タイミングを見計らったかのように、厨房から響く太い声。
パタパタと厨房へと向かう由良さんを追うと、厨房からひょっこりと顔を出した、由良さんの旦那さんの祐二さんだった。
何か話しているようだけど、その内容はここまで聞こえない。
二言三言会話を交わすと、2人がふわりと笑う。
なんかいいな。あーゆうの。
…幸せそう。
周りがぱあっとして、ふんわり明るくなったみたい。
由良さんも背は高い方だけど、祐二さんはもっと背が高くてスマート。
少し日に焼けた肌に、爽やかな笑顔に優しい瞳。
まるで包み込むような優しい笑顔に、気持ちがほっこりとし、同じくらい切なくなった。