「…こんな親居るか?普通」



「う…ん〜?まあ子供じゃないし?」



「帰省した息子を置いて、慶兄の事があるにしろ、逆に向こうに行くんだぞ」



「…ノーコメントで」




そう言われてしまうと、余計に何も言えなくなってしまう。


苦笑いするしかない私に向かって、少しだけムッとした瑠衣斗が手を伸ばす。



身動きする事もできないまま、ドキドキとしながら固まる私の腕を、グッと瑠衣斗が引っ張った。


そんな力に思わずよろけてしまい、前のめりになったまま瑠衣斗の胸に倒れ込む。



早い自分の鼓動が伝わりそうで、途端に恥ずかしくなってしまう。


何だか久々に感じる瑠衣斗の温もりに、目眩がしそうだ。



「無理してねえ?帰るなら帰るでいいし…思った事はちゃんと言えよ」



心配したような、どこか私を気遣うような瑠衣斗の声音に、胸が苦しくなる。



もうちょっと…強引でもいいのに。



なんて思った自分の考えに、1人ハッとして恥ずかしくなる。



瑠衣斗の腕の中に居ると、気持ちがふわふわと蓋を開けたみたいに、溢れてくるんだ。



ギュッと瑠衣斗の服を握り込み、胸に顔を押し付けた。



トクントクンと聞こえる胸の音が、愛おしさに溢れる。



「るぅとくっついてると…なんかすごい幸せって思う」



「…も…もも…?」



「でも、胸が苦しくて大変」




幸せってすごく思うのに、胸が苦しくて苦しくて、何とも言えない気持ちになるんだ。



離れたくない。そう思うの。