明るい光に、うっすらと目を開けた。
それでも眩しくて、すぐに手で目元を覆う。
う〜…朝だ…あんまり眠れなかった……。
朝から五月蝿い程の蝉の大合唱に、布団を被りたくなる。
何か夢を見た気がするが、全く覚えていない。
ただ残るのは、久々に感じる胸の後味の悪い感覚だ。
もぞもぞと体を起こすと、周りの景色が目に入ってくる。
…あれ?誰も居ない……?
思わず枕元に置いてある腕時計を手に取り、見て驚く。
えっ!!もう11時!?
みんな起こしてくれてもいいじゃん!!
慌てて布団から抜け出し、綺麗に片付けてから部屋を飛び出す。
急いで居間へとやって来ると、思わずピタリと足を止めた。
「お。起きたか?」
「う…うん…おはよう」
「おはよう。…あのさ、もも」
「うん……何でみんな…居ないの?」
「……実は…」
瑠衣斗の説明に、私はまだ夢の中なんじゃないかと思い、慌てて洗面台の前に立つ。
歯を磨いてみても、洗顔をしてみても、ほっぺをつねってみても、夢ではないのだと実感させられた。
なんと。
みんな先に帰ってしまったのだ。
おじさんとおばさんまで、慶兄の引っ越し準備の手伝いと称し、なんと一緒に付いて行ってしまったらしい。
「止めたんだけど…無駄手間だった…」
瑠衣斗の慌てる様子が、何とも可哀想にも思えた。