「べ、別に…隠し事なんかじゃないもん…」
「じゃあ何考えてたんだ?」
「……乙女心ってヤツですぅー!!」
逃げ道がない事を悟った私は、とっさにそう答えていた。
乙女心には間違いないし、るぅだって、私には男心が分からないって事言ってたし。
でもきっと、ここですんなり素直な気持ちが言える方が、きっと可愛く思えるんだろうな。
でも私は、そんなに素直にはなれないから……。
「なんだよ、卑怯な事言うなよ」
「そんなつもりないもん」
きっと、素直に浴衣が着たいって、ただそう言うだけ。
でも何だか私にとっては、むず痒くて仕方ないんだ。
「んっとにこの子は…」
ポツリと言った瑠衣斗の言葉に、顔を跳ね上げる。
少し拗ねたような、ちょっと納得いなないような顔をした瑠衣斗に、頬が緩む。
ちょっとだけ、お祭りに胸が弾む気がした。
「ねえ、るぅの地元のお祭りなら、みんなも行くでしょ?どっちみち一緒になっちゃうと思うけど」
「……げ。そうじゃん。考えてなかった」
「相変わらず、行動が計画的じゃないね」
「うるせー。これから計画を立てるんだよ」
サラサラと風に稲が揺れて、濃い緑が夕陽色に赤く染まる。
ヒグラシが鳴くたびに、何だか胸が切なくなるのは気のせいなのか。
遮る物のない夕陽に、空一面が茜色に染まる。
そんな夕陽を浴びながら、凸凹に手をつないで並んだ不揃いの影を、どこまでも伸ばしていた。