瑠衣斗が言いかけた言葉は何だか気になるが、ここは瑠衣斗と過ごすお祭りの事だけを考えよう。
大丈夫。今年はいつもの夏とは違う。
私にはるぅが居てくれるんだ。
「お祭りかあ…全然行ってなかったなあ〜」
「せっかくだし、浴衣でも着たらどうだ?」
「浴衣?でも私持ってないし…」
当然、家から持ってきている訳でもないし、ちょっと着たいな。なんて思った所で、それは不可能だ。
それに、私が浴衣を着たら、浴衣を着るのではなく、浴衣に着られてるようになってしまうような気がした。
背も低いし、フリーサイズの既製品ですら、きっと大きくてぶかぶかになっちゃいそうだしなあ……。
何となく残念な気持ちになってしまい、視線を下げる。
美春なんかが浴衣着ると、本当に可愛かったなあ…。
小学生の頃の思い出が頭をよぎり、綺麗に可愛く着こなす美春が羨ましくなった。
「どうしたんだよ。なに落ち込んでんの?」
「えっ…」
私の表情を見ていたのか、瑠衣斗がクスクスと笑う。
何となく見られていた事の恥ずかしさに、頬が熱くなる。
まさか思っていた事なんて言える筈もなく、慌てて誤魔化そうと口を開けた。
「別に何も落ち込んでないよっ」
「ふうーん…俺に隠し事?」
「…は?えっ?」
そんな言葉と共に、ニヤリと意地悪く口元だけを上げて笑う瑠衣斗に、胸がドキリと音をたてていた。