「もうじき…お盆だな」
「うん、そうだね」
瑠衣斗の言葉に頷きながら、大きな夕陽を眺める。
腫れ上がった太陽が、空に赤い絵の具を垂らしたようで、滲んで見える。
ひぐらしが切なげに鳴くと、私の胸がキュッと鳴るようだ。
もうすぐでお盆。
夏祭りなんかで賑やかになる世間とは裏腹に、私は毎年、塞ぎ込みがちになる時期。
家族の命日なんだ。
「今年は…どっか祭りでも行くか?」
瑠衣斗の言葉にハッとし、慌てて笑顔を向ける。
気を使ってくれているのか、心配しているのか。
そんな瑠衣斗の表情に、私は申し訳なさで胸が締め付けられた。
「うん。せっかくだしね。みんなと行ったらうるさくて大変だろうね」
いつもなら、みんなとの時間が何よりの私の楽しみなのに、家族を失った翌年から、私はお盆の間中、家から一歩も出る事ができなくなっていた。
みんながみんな、心配してくれてはいたが、私の気持ちを察してなのか、そっとしておいてくれたんだ。
何だかみんなと居ると、辺り構わず誰かを傷付けてしまいそうだったから。
私が私ではないような、そんな気がしてたまらないのだ。
何よりも、みんなに気を使ってもらう事が…無理に普通に接してもらってしまうような気がして、私はみんなから距離を取ってしまったんだ。
「いや、2人で…って言ったら、ももは嫌?」
「…え?2人…?」
「そ。俺と、ももと2人で」
予想外の瑠衣斗の提案に、頬が熱くなる。
何だかいろいろ頭の中で考えが巡ったみたいだが、意識は瑠衣斗にしか向いていなかった。
「2人で過ごそう。たまにはももとデートぐらいしてもいいだろう?」
そう言う瑠衣斗のはにかんだ笑顔に、私は自然と笑えていたのだった。