大きな夕陽に向かいながら、田んぼ道を歩く。
前方には、私にリードを持たれながら、散歩が嬉しそうに尻尾を振るももちゃんが居る。
時々振り返って私の顔を伺う姿が、何とも愛らしい。
「本当にコイツは、俺には容赦ねえクセに…」
「るぅに甘えてるんだよ」
「甘えてんなら、もっと違う甘え方があるだろう……」
悪戯に、夕陽が私と瑠衣斗の影を、伸ばすだけ伸ばす。
でも、真っ暗な闇がやって来ると、それも飽きてしまったようになくなってしまう。
優しく手を握り締めてくれる瑠衣斗に、甘い痛みを胸に覚える。
あれから特に進展はないけれど、この時間が私には幸せだ。
何だか瑠衣斗には、窮屈な思いをさせているかもしれないけれど、もう少し、この時間を大切にしたい。と言う気持ちは、私も同じだから。
「なあ、…もも?」
「ん?」
掛けられた声に瑠衣斗を見上げると、一瞬目が合うとすぐにそらされてしまった。
心なしか顔が赤く見えるのは、夕陽のせいだろうか。
そのまま考え込むようにして、口を噤んでしまった瑠衣斗を、私は不思議に思いながらも見つめた。
「…やっぱ何でもねえ」
「え?なに?気になるでしょう?」
「いや、本当に何でもないから」
何だか納得はできなかったが、ここでしつこく迫るのも嫌なので、渋々と言葉を飲み込んだ。
なんとなく会話も途切れてしまうと、変に気持ちが焦り出す。
みんなが居ない今、このドキドキは止める事なんて限りなく無理に等しかった。