「それになあ、俺はもう帰って来ないような言い方するな」
慶兄は、はあ、とため息をつきながらも、次の瞬間には優しい笑顔を向けてくれた。
きつく抱き締める瑠衣斗の腕が苦しくて、まるでそんな瑠衣斗の気持ちが染み入るようだ。
「ま、瑠衣斗がこんなんだから、ももから離れてきそうだけど…大丈夫か?」
「離れねえよ鬼畜!!」
いつまで経っても、私はみんなに心配をかけてばかりだ。
それなのに、こうしてみんな私を優しく包んでくれる。
瑠衣斗と慶兄の言葉が飛び交う中、私はそっと美春を見つめた。
大きな瞳から、ポロポロと涙が溢れ、そんな涙を俊ちゃんが根気よく拭う。
私のために、泣いてくれる美春。
怒ってくれたり、心配してくれたり。
一緒に笑ってくれたり。
「美春、ごめんね」
「美春ももと離れないんだからー!!」
慶兄は、もっと甘えろって言うけど、やっぱり甘え方なんて分からない。
でも、ちょっとだけ、甘えたいなと思った。
十分甘えてる気もするんだけど…違うのかな。
「連絡するよ。向こうに行っても、ももの事考えてる」
私の頭を、ポンポンと優しく撫でてくれる慶兄が、ふわりと笑う。
遠く離れてしまうのは寂しいけれど、夢に向かって慶兄は頑張りに行くんだ。
私も、精一杯応援しなきゃいけない。
「ももは俺のだからな」
「お前はももに、せいぜい飽きられないようにな」