「あぁっ、俊ちゃん大丈夫?荷物重そう…」
「ねえ!!ここが2人のお家!?なになに!!旅館!?旅館みたーい!!」
私が言い切る前に、美春が興奮したように目をキラキラとさせる。
まあ…無理もないか。
「美春、とりあえず中に入って、少しゆっくりしようか」
「うん!!そうだねー!!」
慶兄が苦笑いしながらも、美春をどうにか落ち着かせようと声を掛けるが、無意味のようだ。
その後、室内へと足を踏み入れた美春は、こっちが心配になってしまう程のはしゃぎっぷりだった。
後からやって来た由良さんと隼人君には、興奮しすぎて由良さん自らが落ち着かせようとしたり、更には仕事を終えて帰ってきたおじさんとおばさんには、もう誰も美春を止める術なんてなかった。
「すごいすごい!!元旅館なんですかあ!!しかも美形一家って…もおホントにすごい〜!!」
「元気な妊婦さんねえ!!好きなだけ羽を伸ばしてってね」
そんな様子を、私は膝に隼人君を抱えて見守る。
すっかり私に懐いてくれた隼人君は、私にしっかりと抱きつきながら、美春をじっと見つめている。
その姿が可愛くて、私はそっと顔を覗かせた。
「隼人君どうしたの?」
「おねーちゃん…あかちゃんいるの?」
私を見つめる大きな瞳に、不思議そうな色が伺える。
思わず顔がふにゃんと綻び、両手で隼人君の顔を包み込んだ。
「そうだよ。お腹にね、赤ちゃんが居るんだよ」
「おなか?」
「そう。お腹に居るんだよ」
「ふうーん…」