初めて知る、瑠衣斗の過去。
一体瑠衣斗は、どんな思いで1人過ごしていたのだろう。
眠れない夜を過ごす事も、想いを巡らす夜も、心が潰れてしまいそうな夜も。
いつの間にか、瑠衣斗を自分に重ねていた。
そして、ふと思う。
そっか…こう言う事だったのか。
こうして、私が思う事を、瑠衣斗は嫌だったんだ。
それを表すように、私の胸はドクドクと激しく鼓動する。
でもこれは、違う。瑠衣斗の思っているような事で、私は胸が苦しい訳ではないんだ。
「るぅ…私、何もできない」
気休めになるような言葉なら、誰でも言える。
でも、そんな言葉は、欲しいわけではない。
同じ気持ちを共有したいなんて思わない。
慰めてほしいわけじゃない。
「どうしてあげればいいのかも、分からない」
瑠衣斗からの返事はない。
いつの間にか握り締めていた瑠衣斗の手に、グッと力が込められた様子が分かる。
「何も言えないし、何もできない。でも…、」
私はそっと、動かない瑠衣斗の髪に触れ、優しく頭を撫でる。
そしてそのまま、瑠衣斗を包み込むように抱き締めた。
広い背中を、何度も何度も撫でながら、ギュッと瑠衣斗を抱き締める。
甘い爽やかな香りが、さらに私を切なくさせ、そっと目を閉じた。
「こうして、ずっと一緒に居るから…るぅが、私にもしてくれたように…」
「私に、約束してくれたみたいに」
聞こえるか聞こえないかと言う程の私の言葉は、瑠衣斗に届いたかは分からなかった。