「多分好き勝手やってた俺は…最初は意味分かんねー久斗の言葉に笑ったけど…あいつの夢だったんだ」
「……ゆ…め…?」
ようやくポツリと出た言葉さえも、自分の言葉じゃないみたいだ。
そんな私の言葉に、瑠衣斗が切なげに微笑む横顔から、私は何とも言えない感情が溢れ出しそうになる。
「高校に行って、高校デビューする事。これから中学に通うって言うのに、高校だぜ?笑っちゃうだろう?」
小さくクスッと笑った瑠衣斗に、私は笑えなかった。
きっと、頭の良い瑠衣斗なら、薄々分かっていたはず。感づいていたはず。
気付いていたのだろう。
「んで、親と医者の目盗んで病院抜け出した。迎えに行くっつー俺を断って1人でバス乗って、俺とバス停で待ち合わせて…」
みんなが顔を揃えて言う程の、ひねくれっぷりだった瑠衣斗は、本当に本当に優しい人だった。昔から。
「歩くのもやっとでさ。門くぐって、校舎見上げて…俺にありがとうってよ」
この先を、聞く勇気は、私にあってもなくても、結末は一つしかないのだ。
正面を見据え、一呼吸置いた瑠衣斗が、目を床に伏せた。
まるで何も見たくないとでも言うように。
サラリと流れた前髪が、瑠衣斗の顔を覆う。
「んで…そのまま倒れた。顔は笑ってんのに、目ェ開けねーの。抱き上げたら骨と皮みてえだし。そのまま…もう起きなかった」
瑠衣斗の過去に、抱えていた事に、私はその全てが夢であってほしいと願わずにはいられなかった。