「だからかな…気持ちが言えない分、そーやって自己満足したりして」



もしかして私、ずっと瑠衣斗と一緒に居ながら、たくさん瑠衣斗を傷付けていたのかもしれない。


今なら、みんなの言っていた言葉の意味が分かる。



自分の気持ちに素直になれないから、瑠衣斗やみんなを心配させた。


瑠衣斗の気持ちなんて考えたりもしなかったから、私は瑠衣斗に甘えすぎた。



もし、瑠衣斗と逆の立場だったなら。


私は辛くて傍にはいれなかったのかもしれない。



「それ以前に…俺には人を好きになる資格なんて、ないと思ってたから」



私が口出しなんてしていいのかも分からないが、私は瑠衣斗を受け止めたいんだ。


だったら、私も気持ちを言葉にしなきゃいけないんだ。




「それは…弟…さん…?」




まとまりのないセリフに、瑠衣斗は苦笑いをするようにはにかむ。



「そうかも…いや、そうだな。アイツ…久斗っつーんだけどな」



「ひさと…?」



「うん」



瑠衣斗の家の、柱で見つけた名前。


慶兄と、瑠衣斗の名前の下に、刻まれていた久斗と言う名前だ。


やっぱりあれは、弟さんの名前だったんだ……。



もう居ない人の思い出や面影は、どれだけ胸が苦しくなるかなんて嫌と言う程知っている。



遠くを見つめるような瑠衣斗の横顔から、私は目が離せない。



「生まれた時から心臓に爆弾抱えてたんだ」



「…爆弾…」



「何かすげー難しい病気でさ。それでも、運動以外は普通に生活してたんだけど…俺が中学上がる前ぐらいに入院した」



瑠衣斗は今、何を見ているのだろう。


私にはそれが何かなんて、分からなかった。