「なあ…もも」
「うん?」
ポツリと呟いた瑠衣斗の言葉が、静まり返った教室内へと溶けていく。
私の目に間近に写るものは、片足を立てて腕を乗せ、そして長くスラリとした瑠衣斗の片足に、可哀想な私の短い足。
よくこの凸凹さ加減に、瑠衣斗を含め龍雅と宗太にいじられたっけ。
龍雅はるぅに、パンツのチラ見かなんて言ったりして、物凄く睨まれてたりしたなあ。
懐かしい思い出と、内心では驚きを隠せない自分。
思い返せば思い返す程、瑠衣斗の言葉が私を支配するようだ。
「何で俺が、よくここに座ってたと思う?」
検討もつかない話に、理由があったなんて思いもよらない。
素直に首を傾げた私を、瑠衣斗が優しい笑みで見つめる。
日本人は床に座って生活をする習慣があるから…椅子は疲れちゃって…って事かな?
そんな私の考えを知ってか知らずか、瑠衣斗はそのまま前に向き直る。
「ここに座ってると、ももを周りから隠せるから」
「私を隠せる…?」
「ももちっせーし、ここなら少し死角ができるだろう?他の奴らから、独り占めした気分だったなあ」
小さな独占欲に、初めて気付く。
そんな理由、思い付かないし考えた事なかった。
懐かしむような口振りとは逆に、私の頬が熱くなっていく。
「俺って相当重症だよな」
懐かしい思いに、初めて知った理由。
瑠衣斗の気持ちが、染み入るようだった。