しばらくの間があると、フッと瑠衣斗が口元を緩める。


それでもその伏せられた顔は、何だか泣いているようで。



「俺な…弟居るって言ってただろう?」



「うん」




私がずっと、気になっていた事、引っかかっていた事。


触れてはいけない話なんだ、と感じた事。



ひょっとして、仲が悪いのかな…喧嘩とかして、ずいぶん会ってないのかな…なんて思ったり。



息がしにくくなる程、心臓がドキドキと鼓動する。


神経がピリピリするように、何だか痺れる。







一瞬、頭の中が真っ白になった。


いや、目の前が全て、頭の中に入ってこなくなったようだった。








「もういねーんだ。6年前に死んだ。……俺が殺したようなもん」






胸が詰まって、息が止まった。


予想もしなかった言葉に、目を見開いた。



私は、簡単に考えすぎていたのだろう。



「それで、旅館も辞めた。全部俺が…」




言い切る前に、私は瑠衣斗の頭を抱き締めていた。



淡々と話す瑠衣斗が、痛々しくて、でもそれを見せない瑠衣斗が、本当に嫌で。


私は瑠衣斗を、抱き締めた。