「そーゆうの…顔見て言ってくれる?」



驚きすぎて、心臓が口から飛び出すかと思った。


何が起きたかも分からず、抱き締められていると言う事に、ようやく気付く。


予想外の展開に、返事なんてできないまま、驚いた拍子に掴んでしまった瑠衣斗の腕に、キュッと手に力を込めた。



「何でそんな事言うの?」



「…え?」




すぐ耳元で、聞こえてくる掠れた甘い声。

私を包み込む、甘い爽やかな香りに、力強い瑠衣斗の腕。


その全てに酔ってしまいそうで、意識を必死に保つ事で精一杯だ。



「俺、いつか絶対理性飛ばす気がして心配なんだけど…」



はあ、と吐き出された瑠衣斗の溜め息に、背筋がゾクゾクとして首を竦める。



その前に…私が倒れちゃいそうだよ。



触れる温もりに、ドキドキした。


力強い腕に、もっと強く壊れてしまう程抱き締めてほしい。


その瞳一杯に、私だけを映してほしい。


優しい唇で、甘いキスを零れる程落として欲しい。



「黙ってないで…こっち見て、声、聞かせろよ」



きっと私、すっごく欲張り。


瑠衣斗を独り占めしたくて、私で一杯にしたくて、どうしようもないくらい。



私は、抱き締めてられた腕の中で、ゆっくりと振り返った。




身を乗り出し、間近に迫る瑠衣斗の顔は、頬を赤く染め、照れたように私を見つめていた。