再び私を見つめた瑠衣斗は、もう優しい笑みを浮かべて、先ほどまでの表情はない。


困惑する私を余所に、バスはゆっくりと停車する。


促されるようにしてバスを降りると、真っ直ぐに伸びた道の先に、小高い場所にある校舎が目に入った。



見下ろすように、転々と家が連なり、のどかな景色の中、山を背に瑠衣斗の通った学校が建っていた。


走り去るバスの音を背に、瑠衣斗が私の手を握り込む。



「あれが中学校。でけーだろう」



予想していたよりも、はるかに大きく、近づくにつれてその存在感に驚く。



「うん。すごく意外」



「すごくは余計だし」



何となく、言葉を出すのが億劫だ。


気持ちが鉛のように沈んでいくのが分かり、瑠衣斗に何と声を掛けるべきかも分からなかった。


それ以前に、夢に見た物によって、余計にそんな言葉も出てこなかった。



顔も見れないまま、並んで一本の道を歩く。


近付くにつれて、何故か胸騒ぎを覚え、その理由も分からないまま大きな校門をくぐった。




大きな広いグラウンドに、左手の奥にはテニスコート。


ぐるっとそんなグラウンドを囲むように、青々とした葉を茂らせた桜の木がずらりと植わっている。


とても設備の整った様子の風景に、少しだけ懐かしさを感じた。


「来たことはないのに、何か懐かしい…」



「学校なんて、雰囲気は似てるだろう」



私の知らない瑠衣斗の歴史を、こうして目の当たりにすると、何だか嬉しくも切なくなる。



それはきっと、繋がれた手のせいなんだろうか。