泣きわめき、誰かに縋れる程、私は子供になれなかった。


大人になった気でいた。


きっと知らず知らずのうちに、私は意思を閉じ込めて、それを殺していた。


それが今になってもこうして、私を見えない何かが襲う。



寂しさや辛さ、悲しさが消えなくて、こうして何度も何年も、私を翻弄しているようだ。



感情を押し殺す事でしか、私にはどうすることもできなかったんだ。




グッと口を噤んだまま、何も言えないまま小刻みに震える私を、瑠衣斗は根気よく宥めようとしてくれている。


知らない内に痛みだしていた頭の痛みは、徐々にその存在を薄めてきていて、私はそっと目を閉じていた。



「なあ…もも?」



優しい問いかけに、薄く目を開く。


バスの車内には、私達以外、乗客は居ない。




「俺も、ももと同じような事があるんだ」



「……え?」



同じような事?私と…同じような事…って…?



そっと視線を上げると、何だか苦しそうな顔をした瑠衣斗に、言葉を失う。



どうしてそんな顔するの?


何かあるの?



全く話の中身が分からずに、胸一杯に疑問と不安が入り混じる。


それがごちゃごちゃに絡まってしまって、余計に言葉なんて出てこない。




その時、車内にアナウンスが流れる。


そのアナウンスに反応するように、ゆっくりと私から体を離した瑠衣斗は、下車ボタンを押した。


「ももに案内したい所がある」