鳶が空高く、円を描くように飛ぶ。
すっぽりとここだけがくり抜かれたような青空が、目一杯に広がっている。
てっきり車で行くと思っていた私は、そのまま家から歩いてバスに乗り込む頃には、何だかワクワクしていた。
「学校、バスで通ってたの?」
窓際に座る私は、通路側に座った瑠衣斗を見上げた。
スッと視線を私に向けた瑠衣斗は、そのままふわりと笑みを浮かべる。
「うん。歩ける距離じゃない」
距離が近いせいか、瑠衣斗の顔を見るのも恥ずかしくなる。
「そうなんだ…。何かすごいね」
「今、すごい田舎とか思ったろう」
「……ううん」
いつもと変わらないような会話に、いつもと違う瑠衣斗。
ふとした瞬間に、何か遠くを見るような目に、胸がざわざわとざわつく。
それでも、決定的なその原因も分からない私は、何も言えずにいる。
会話が途切れてしまうと、バスのエンジン音に身を包まれる。
よく効いた冷房が、頭上から落ちて肌を冷やす。
すぐ右腕に感じる瑠衣斗に、トクン、トクン、と心地良い鼓動を感じる。
流れる景色を、私は飽きもせずに眺め、1人思いに耽る。
こうやって、毎日るぅは学校に通ってたんだ〜……。
慶兄も、由良さんも、同じ景色を見ていたと思うと、自分が今この景色を眺めている事が、何だか不思議に思えてくる。
座席にもたれ掛かるようにして身を預けると、その瞬間、私の頭にコツンと重みが加わった。
えっ…寝てる?
頭を動かさないまま目だけを向けると、そこには瞳を閉じた瑠衣斗が目に入った。