「あれ?ももちゃんは?」



瑠衣斗が用意してくれた朝食を頬張りながら、いつも瑠衣斗の後を追うももちゃんが居ない事に気付き、辺りを見渡す。


おじさんもおばさんも、とっくにお仕事に行っている時間だし、龍雅と宗太も、今日は個々で出ているせいか、とても建物全体が静かだ。



「今日は親父らと一緒だけど」



瑠衣斗が珈琲を入れたマグカップを2つ持ちながら、1つを私の目の前に置く。


立ち上る湯気に、ふわりと香る芳ばしい匂い。



「そっかぁ…ありがと」



何だか、何から何までやってもらってしまっていて、女としてどうなんだろうとも思う。


私の目の前に腰を下ろした瑠衣斗を、伏し目がちにマグに口を付け、そんな姿にドキリとする。


顔を上げた瑠衣斗の唇に、自然と目が行く。


少し薄情そうな綺麗な唇が、フッと緩み、そんな光景に弾かれるようにして目を上げた。


「そんなにじっと見られたら、照れるんだけど」



「え?あっ、違うの!!その…」



「ふーん」




慌てて食事を済ませようと視線を落としても、もう綺麗に食べてしまっている。


どうにか自分を落ち着かせようと、瑠衣斗の淹れてくれた珈琲に唇を隠すように口を付ける。


逆に今度は、物凄く視線を感じて顔が上げれない。



何だかソワソワとしてしまう朝食を済ますと、瑠衣斗の出掛けるかと言う言葉に従い、そのまま荷物の置いてある部屋へと戻る。



何だか寝起きから落ち着かない気持ちのまま、私は瑠衣斗の隣で化粧を済ませたのだった。