慌てて瑠衣斗を引き止めようと立ち上がると、もう背を向けて歩き出していた瑠衣斗が振り返る。


「そんな顔すんなよ」


「へっ?そんな顔?」



そんな顔って、どんな顔?



訳の分からない事を言われても、どうしようもないんですけど。


再び前を向き直った瑠衣斗は、腰に手を当てて肩で大きく溜め息を吐く。


顔が見えないものだから、どんな表情かも伺えない。


「今日も我慢大会かあ…」



部屋のすぐ扉の前で立ち止まっている瑠衣斗が、出て行ってしまうのを止めようと慌てて駆け寄る。


「待って待って、何回シャワー浴びるつもり?」


「…お前よお〜…」




逃げられないように瑠衣斗の腕を両手で掴む。


筋の浮いた腕に、何の気なしに触れたものの、無駄に意識し始めてしまい身を固める羽目になる。


瑠衣斗が私を見下ろしているのが分かるが、顔なんて見れなかった。


顔が熱くなるのが分かり、目が合う前に慌てて顔を伏せる。


るぅがシャワー浴びに行くのは私のせいなんだろうけど、引き止めてしまう事でこの後どうすればいいかも思い付かないよ〜…。


「…ごめんなさい」



とりあえず、謝っておこう。



だって、やっぱり私のせいだし……。



どうする事もできなくて、こんな時、たくさん恋愛をしてきた人はスムーズに何か言えるんだろうなと羨ましく思う。


「何で謝るの?」



「……私のせいだと思うから」




ダメだ。私、るぅの事になると、物凄く臆病になっちゃうみたい。



「だから…ゴメンね」