考え出すともやもやと、胸の奥が詰まる。
何とも言えない不安に、気分が沈むように溜め息を吐き出した。
気持ちは通じているのに、こんなにももどかしく、不安が募る。
大切に思われている事が分かっているのに、些細な事で崩れそうになる。
もうすぐ季節は夏になる。
8月の冷たい雨は、今でも鮮明に思い出せる。
当時を思い出す事を抵抗し続けていた私は、その時の記憶に瑠衣斗が居てくれたと言う事実に、少しだけ前向きになれるような気がした。
向き合わなければならない。そう思った。
この不安は、私の中で目を背け続けていた物と、何かリンクしているような気がする。
私の前から、大切な人が居なくなってしまうような、そんな不安。
瑠衣斗と気持ちが通じ合った事で、その思いがどんどん膨らむようだ。
「ただいま〜。あいつら居間で潰れてやがる」
「!?」
しばらくして戻ってきたらしい瑠衣斗の声が、突然背後から聞こえ、体が飛び上がる程驚いた。
思考の渦に巻き込まれていた私は、その考えもどこかに飛んで行ってしまう程、慌てて振り返る。
「お…お帰り…」
取り繕うような返事に、張り付けたようなぎこちない笑顔。
何だか今まで考えていた事が、バレてしまうような気がして無理やり頬を上げる。
うっすらと頬を紅潮させた瑠衣斗は、髪もほとんど乾かないままで、何だかとても色気が増している。
深い二重の色素の薄い瞳が、潤んでいて、いつの間にか思わず見とれてしまっていた。
「…そんなに見るなよ……」
「え?」
「もっかいシャワー浴びなおしてくる」
「え!?なんで!!」