本当に、凄い光景だった。


建物に沿うようにして、木でできた牧場にあるような柵が、どこまでも続く。


仕切るようにして並べられた柵に近付く頃には、私は言葉もなくその柵に手を置いていた。


柵を境目にし、ゆるりと深い盆地になっているようだ。


そしてその広さは、本当に見渡す限り広大な土地でもあり、沢山の牛が放牧されている。


そんな景色をバックに、筋までも見える雪山が私たちを見下ろしていた。



時折聞こえてくる鳥の囀りに目を向けると、悠々と飛び回る鳥達が何とも気持ちよさそうだ。



「…お?瑠衣か?」



景色に見とれていた私は、現れた存在になんて全く気づかなかった。


声のした方に振り返ると、丁度建物から人が出てきた所だった。


ゆるいジーパンに、Tシャツ姿というラフな格好をした男性は、しっかりと日焼けしていてとても黒い。


見た目からしてきっと、同い年ぐらいだろうか。


「相変わらずだな。こげぱん」



……こげぱん…。



「てめーは相変わらずうるせえなぁ!!」


「お前のうるささには負ける」


「負けてたまるか」



黒く焼けたせいか、少し強面に見えた彼は、そう言いながら笑うと驚く程爽やかだった。



頭に巻かれた白いタオルが、よく似合うと思った。


でも反面、瑠衣斗もよく似合うんだろうな。なんて考えてしまう。



「彼女か?」