「ま、そう思うのも無理ないよなあ」
「やっぱり!?付き合ってるんでしょお〜!!」
「付き合ってるよ」
キャアキャア騒ぐまなみに対して、慶兄はニッコリ笑っている。
ちょっと…そんなに飲んだの!?まさかるぅと慶兄を間違えてるとか気付いてない…よねぇ?
内心焦りまくっている私を余所に、慶兄が再び口を開いた。
「瑠衣斗じゃないけどね」
「………へ?」
何を言っているのか分からない。とでも言うようなまなみに対して、慶兄は思わずドキッとするような笑顔で私を見つめた。
「俺の名前は?」
「えっ…えぇ…っと、慶衣斗…?」
素直にポツリと答えた私に対して、慶兄は優しく頭を撫でた。
その直後、まなみの驚いた叫びに思わず耳を塞ぎたくなった。
「えぇーっ!?なになに!?どーゆう事!?」
「…え…と、お兄さん…?」
「ええぇぇ〜〜〜〜〜っ!?」
苦笑いするしかできず、曖昧に笑っておいた。
慶兄の気持ちを考えてみるが、予想もできない。
今まで、私に対して瑠衣斗の事を一切触れようとはしなかった慶兄に、後ろめたさを感じてならない。
「瑠衣斗じゃないんだ。兄の慶衣斗です」
「お兄さん…居たんだぁ……」
こんな事…言わせてごめんね。慶兄……。
感じた視線に顔を上げると、沢山の同級生の中から、タイミングを計ったように瑠衣斗と目があった。