「んじゃ、行くか」
そのまま、私と瑠衣斗は並んだまま、大きな鳥居をくぐる。
鬱蒼と木々が茂って見えた外見からして、周りからは中の様子は全く伺えない。
でも、鳥居をくぐってみると、一直線に続く立派な石畳が続き、まるで木がその場をよけるようにしている。
「すご〜い…トンネルみたい」
葉が雨除けの役目を果たすように、先程まで傘から聞こえてきていた雨音が止む。
でも時折、大きな雫が葉から弾かれて落ちてきたように、音を立てる。
「傘いらねーかな?」
「うん。大丈夫だよ」
そんな私の言葉を聞いた瑠衣斗が、傘をたたみ込む。
パッと視線を上げた先は、木々や沢山の葉のせいで、よく見えない。
「どうした?行くぞ?」
「うん」
まだ朝は早いし、雨が降っていて曇りではあるけれど、鬱蒼と木々が立ち並んでいるせいか、少し暗い。
独特の雰囲気に、思わず神経が敏感になる。
足元には、細い木の枝や落ち葉が落ちていて、時折歩くたびに軽い音をたてる。
少しひんやりとしているのは、きっと雨とこの沢山の木のせいだろう。
「ガキの頃、よく遊びに来てたんだ」
「小さい頃に?」
「うん、1人で来たり…中学の頃はよくサボってここで寝てたり」
「昔から変わってないね?」
何となく、私の知らない頃の瑠衣斗の話が聞けて、思わず頬が緩む。
当時の瑠衣斗を想像すると、胸が熱くなる。
「俺の…特別な場所」
「…特別…?」