「美春、綺麗だなあ」
ふと慶兄を見ると、少しだけ顔が赤くなっている慶兄が、テーブルに肘をついてふわりと笑っている。
指先でテーブルに飾られた花を撫でている様子に、胸がドキドキと高鳴りだす。
「結構飲んだ?」
「ん?あいつらにペース合わせてたら酔わない奴なんていねぇよ」
クスクス笑う慶兄につられ、思わず笑ってしまった。
「何か…宴会みたいになってきちゃったね」
「だなあ〜」
周りを見渡すと、やたらと盛り上がって騒いでいるみんなが見受けられる。
そんな私の視線に、同級生の女の子が気付き、にへらと笑って足元もおぼつかない足取りで近付いてきた。
「ももちゃんさしぶりぃ〜!!…あれ?松風〜くん?」
「まなみ…久しぶりだね。ん〜と…まあそうなんだけど…」
そう答えた私に向かい、まなみはニコニコと赤い顔で慶兄を見つめた。
「松風くん何か雰囲気変わったねぇ!!前はももと美春にしか笑ってくれないイメージだったのにい!!」
「あ…だから違くて…」
そう否定する私の言葉なんか気にせずに、まなみはクルクルに巻いた髪に指を絡ませながら声を遮った。
松風は松風だけど…兄の方だよ!!
「やっぱり付き合ってんの〜?高校の頃の松風くんって、いっつもさあ、ももを他の男子から守ってる感じだったもんねぇ!!」
「…へっ」
「次はひょっとして二人?ねぇねぇ、どーなのよぉ〜」
悪気があって言っている様子なんてない事は分かる。
分かるけど……慶兄の顔が見れない。
視線を泳がせるしかない私に向かって、慶兄が口を開いた。