「ももは留守番な。頼んだぞ」


大人しくお座りしているももちゃんの頭を、瑠衣斗が優しく撫でる。


舌を出して大人しくしている様子に、思わず顔が綻ぶ。


「よろしくね」



瑠衣斗に続くようにして、私も頭を優しく撫でた。


それに答えるようにして、大きく尻尾を振る様子に、思わず笑みが零れる。


「ほれ、行くぞ〜」


「うん」



家にあった傘を借りて、並んで玄関を出る。



当たり前のように、玄関の鍵をしなかった瑠衣斗は、振り返る事もなく先を歩き出した。


鍵を掛けないのは、田舎の風習なのだろうか?


そんな疑問を抱きながら、私も瑠衣斗の後を追ったのだった。



少し私には大きな傘は、私をすっぽりと隠してしまう。


雨は先ほどよりも弱まっているようで、シトシトと道を濡らす。


田んぼからは、たくさんのカエルの鳴き声に、雨がとても似合う。


昨日の景色とは違う顔に、私は小さな感動を心に残した。




「ねえ、るぅ」


「ん?」



少しだけ先を歩いていた瑠衣斗は、私の声に振り返ると、私と並んで歩き出した。


大きな2つの傘が、少しだけ私と瑠衣斗との間に距離を作る。


隣に並ばれると、私の方が傘が下になってしまい、そのままだと瑠衣斗の顔が見えなくなってしまう。


そっと傾けて見上げてみると、口元を持ち上げて笑う瑠衣斗が目に入った。


「まじちっせーな」