そっと、一階へと続く階段から、のぞき込むようにして足を下ろす。
何だか人の気配がして、ゆっくりと伺うように一階へと降り立った。
誰かな?るぅかな…?
玄関は開け放たれ、新鮮な朝の空気が入ってくる。
シトシトと地面を濡らす雨音さえも、こんなに新鮮に感じられる。
「あれ?ももちゃんもう起きちゃったの?」
声のした方に振り返ると、ちょうどキッチンからおばさんが顔を出した所だった。
「あっ、おはようございます」
慌てて小さく頭を下げると、おばさんは瑠衣斗と同じような笑顔を見せてくれる。
「おはよう。早起きねえ!!少し行くと洗面台あるから、顔洗ってらっしゃい。朝ご飯一緒にしましょ♪」
「な、何かすみません。じゃあ顔洗ってきます」
そう返事をすると、再びおばさんはキッチンへと戻っていく。
そんな姿を見送ると、私は教えてもらった通り、奥にある洗面台へと向かった。
こうして改めてきちんと中を見ると、やっぱりとても広い。
旅館にしては小さいのだろうけど、どこも造りが手の込んでいる事がよく分かる。
少し行くと、扉の開いた場所があり、中を覗き込むと広々とした洗面台を見つけた。
中に入ると、扉を隔てて浴槽があり、大きな洗濯機も置いてある。
造りからして、ここも少しリフォームをされているようだった。
「も〜も〜ちゃ〜〜ん」
「えっ!?はっはぁ〜い!!」
突然大声で名前を呼ばれ、慌てて返事をする。
「歯ブラシ、使ってね〜〜!!」
よく見ると、まだ新品の色違いの歯ブラシが、三本並んでいる。
「ありがとうございます!!」
こう言う気配り、すごいなあ……。