「ま、いつでも会える距離だから。同じ町内だし」
「そうなんだ」
何だろう。この感覚。
胸がモヤモヤして、何かが詰まってしまっているみたい。
「紹介とか受けなくていーし」
「あ…そう言えばそんな事話してたっけ」
「んっとにお節介っつーか何つーか……」
先程までの事が嘘のように、いつもの瑠衣斗に内心ホッとする。
それに同調するように、胸がモヤモヤとする。
首に巻いていたタオルを外すと、瑠衣斗はそのままタオルでガシガシと髪を乾かす。
瑠衣斗の筋の浮いた腕に、さっきまでの露天風呂での出来事が蘇り、慌てて打ち消す。
「あいつの言う事は流しとけばいいから」
「うん…分かった」
雲が垂れ込んできたように、私の心は曇り空のようだ。
夏の梅雨のようで、いつまでも暗い。
また、同じ季節がやって来る。
今年で何度目かなんて、数える事も苦痛にしかならない。
数える事で、私だけ年月を重ねている事を再確認するだけだ。
どうしたんだろう。私。こんな事突然考えて……。
「もも…?どうした?」
黙り込んでしまった私に、心配そうな瑠衣斗の顔が覗き込む。
「うっ…いや別にっ」
突然現れた瑠衣斗のドアップに、驚くほど胸が飛び上がる。
…ビックリし過ぎていつか心臓止まっちゃうよ。