「ねえ、そう言えばるぅって弟さん居るんだよね?」
みんなと海でバーベキューをした時、瑠衣斗が言っていた事を思い出す。
お姉さんの事も話していて、実際に今日会っている。
でも、思い返すと、一度も弟さんの話が出ていなかった事にふと気付いたのだ。
何の気なしにそう言った言葉を、私はすぐ後悔する事になる。
「…そう…だったな……言ったな」
一瞬にして、何故か触れてはいけない事に触れてしまったような気になる。
私の言葉に対して、瑠衣斗は小さく驚いたような顔をすると、それを誤魔化すかのように視線を落とす。
何か気まずそうな雰囲気の瑠衣斗は、気持ちを落ち着けるように一つ息を吐くと、スッと躊躇う事なく私に視線を向ける。
「あっ、ねえるぅ!!由良さん明日も来るんだっけ?」
「………え」
口を開けかけた瑠衣斗を遮るように、私は無理やりに話を変えた。
「明日!!由良さん来る?」
「…知らん。てゆーか、日を改めて来るって一緒に聞いたじゃねーか」
…あっ。そう言えばそうだった。
話を変えれた事にホッとしつつも、わざとらしかっただろうなと思う微妙な感覚に、奥歯を噛み締めた。
何だか、瞬時に触れてはいけない気がした。
それと同時に、あの時の瑠衣斗の悲しそうな目を思い出す。
私はあの時、確かに違和感を感じていた。
どこか遠くを無表情に見つめていた瑠衣斗に、私は何かを感じ取っていたはずなのに。
おじさんも、おばさんも、そして由良さんも。
何も弟さんの話が出なかった事に、私の中で何かか大きく反応するようだった。