階段を登りきり、宗太と龍雅の待つであろう部屋の前へと着くと、中が静かな事に不思議と思う。
あれ?寝てるのかな?
見上げた瑠衣斗も同じ事を思ったのか、顔を見合わせるとそのまま扉へと目を向けた。
両手に荷物を抱えたまま、器用に扉を開けた瑠衣斗は、そっと中を伺うようにして顔を覗かせると、チラリと悪戯っ子のような顔を私に見せる。
両手が塞がっているため、片足を使って大きく扉を開けた瑠衣斗は、躊躇する事もなく部屋へと足を踏み入れ、慌てて私も後に続いた。
中に入ると、雑に敷き詰められた布団の上に、龍雅と宗太が大の字で寝ている。
「ブッサイクな面しやがって」
クスクスと笑いながら、2人を避けるようにして部屋の隅へと行く瑠衣斗に、慌てて続く。
「2人とも疲れて寝ちゃったんだね」
「龍雅は喋り疲れただけだろう」
そのまま、部屋の隅に備え付けてあった小さな冷蔵庫の前で、瑠衣斗は屈み込むようにして座ると、扉を開けた。
手際よく並べるように飲み物を並べる瑠衣斗の隣に、私も一緒に屈み込むようにして腰を下ろす。
「あ、どれ飲む?」
ふと気が付くように、手を止めた瑠衣斗が私に視線を向ける。
思った以上に、近かった視線にドギマギしながらも、慌てて視線を外す。
ギアを変えたように暴れ出す胸の鼓動は、抑えようとしても抑えられない。
「えと、あっ、コレ」
誤魔化すようにして、目に入った飲み物を手にする。
鼓動が全身に広がるようで、指先が震えそうだ。
「オレンジとか珍しいな」
「えっ?…そう?」
やっとの事で言葉を発しても、自分の意志ではないような感覚だった。