上半身を岩場に乗せるようにし、腕に顔を乗せて私は川を見つめた。


川の音に混ざり込むように、虫達の鳴き声が聞こえる。


「…静かだね…」


ポツリと自然と私から出た言葉も、川の音に流されてしまうようだ。


「うるさくないか…?川の音とか」


「違うよ。車の音とか、人の気配とか……静かだなーって」


夜中だろうと朝方だろうと、関係なく絶える事のない車や人。


そんな日常から離れてみて初めて、改めて自分の住んでいる環境が、どんな物だったかという事に気付く。


何も言わない瑠衣斗に、答えを求めている訳ではない。


こんな沈黙も、たまにはいい。


「何か…1人ぼっち……って感じない」



こんな沢山の虫達の声、物心ついた頃に聞いた覚えもない。


心地良い虫達の鳴き声に、そっと瞼を閉じた。


少し火照った体に、湯船から出た背中を涼しく風が体を撫でる。


その時、湯船が波打つ感覚に目をパチリと開けた。


振り返ろうとした時には、後ろから瑠衣斗の腕がお腹に回っていた。


「え!?なにっ」


「暴れるな」


「…っ」


すぐ耳元で聞こえた掠れた声に、一瞬で全身に力が入る。


身を固めた私を、いとも簡単に抱えた瑠衣斗は、そのまま仰向けにひっくり返る。


訳の分からない私は、ハッとした瞬間、ジタバタと手足を動かして抵抗する。


「おいっ、暴れんなよ。上見ろ、上」



う、上……??



言われるがまま、視線を上げた私の目にした物に、私は大きく目を見開いていた。