「こっちから源泉が出てきてるから、こっち来いよ」


「え!!何で!!」


「何でって…体あっためねーと風邪ひくし」



まさか自分からるぅへ近付けと!?


ただでさえ有り得ない状況なのに、これ以上有り得ない状況なんて耐えられませんよ。


見つめる瑠衣斗は、何の気もないような表情で私を見つめている。


ひょっとして、こういう環境で育っているから、これが普通なのかな……?



瑠衣斗の言う事も確かだが、何より、表情を崩さない瑠衣斗に対しても私はそう思うのだった。


「ほらココ。熱いくらいだぞ」


「え、どこどこ?」


まんまと好奇心を抱かせられた私は、何だか少しワクワクしながら瑠衣斗へ近付いた。



瑠衣斗の指差す側へ行くと、先ほど居た場所とは正反対の壁側へとやって来た。


瑠衣斗の左側へと腰をおろすと、足元から暖かい温もりを感じる。


「わぁ!!すごいあったかい!!」


「50度?60度ぐらいだったかな」


確かに先ほどとは打って変わって、体の芯から温まっていくようだ。


目の前には、月明かりを照らした川が、ザアザアと絶える事なく流れ続ける。


手の届きそうな位置に、私は少し身を乗り出して手を伸ばした。


「届くワケねーだろ」


「うん、全然遠かった」



後ろから聞こえてくる瑠衣斗の声に、何だか先ほどまでの緊張感が和らいでいる事に気づく。


何となく、意識し過ぎていた事に恥ずかしくなり、振り返らずにいた。