夏とは言え、屋外でシャワーだけ浴びた体は、思った以上に冷えていた。
じんわりと染み入るような暖かさに、気持ちが解れていく。
それ程大きくもなく、どちらかと言うと小ぶりな露天風呂に、自分の定位置を考える間もなくすぐその場にしゃがみ込む。
肩まで浸かると、全身を柔らかく包み込む暖かさに、いつの間にか力の入っていた肩からフッと力を抜いた。
「気持ちい〜」
「シャワーだけじゃな」
少し動けば、すぐそこには瑠衣斗が居る。
体操座りをするようにして、自分の体を庇うようにしたままの私は、そこから身動きすらできないままだ。
「もも…?」
ふいに呼ばれた自分の名前に、分かり易くビクッと反応した私は、恐る恐る顔を上げる。
すると、予想していたよりも近くに居た瑠衣斗に、更に驚く。
こんなに近かった!?
これ以上、動くスペースもない。
状況からすると、私は逃げ場がないのだ。
「そんな警戒すんなよ…」
「ち、違うよ。警戒なんて…」
してる。めちゃくちゃしてる。
どうしよう。よく考えたら、混浴じゃんこれ!!
立ち上る湯煙に、いっそのこと私を隠してくれないかと願う。
無色透明のお湯からは、少しだけ硫黄の香りが漂う。
滑らかな温もりに包まれながら、私の胸の鼓動が緩まる事はない。
「そっち、ぬるくないか?」
「え?」
確かに…温泉にしては少しぬるいかもだけど……川が近いからじゃないのかな?