周りは背の高い目隠しで囲われていて、川の見える部分だけ浴槽と変わらない高さになっている。
大人2人では余裕に入れる大きさ程の、壷のような陶器でできた浴槽が2つ並んでいる。
浴槽の脇には、備え付けにシャワーなどがあり、体を洗うスペースが整っている。
でも、浴槽の中をよく見ると、中には湯船がたまっていない。
「とりあえず、ここで体洗えよ。俺は隣で済ませるから」
笑いを引っ込めた瑠衣斗は、私に向かってそう告げる。
「…隣…にもあるんだ…」
こんなに沢山お風呂がある家…初めて。
てゆーか、元が旅館だから当たり前かもしんないけど。
「んじゃ、そこ一応脱衣場だから。洗い終わったら声掛けろよ?」
「あ…うん、分かった」
私の返事を聞くと、いつの間にか用意していたバスタオルを脱衣場の棚に置き、瑠衣斗が出て行く。
そんな瑠衣斗の背中を見送り、扉が閉められたのを確認した私は、フゥと盛大に溜め息を吐いた。
一気に疲れた気がして、それでも体を洗おうと脱衣場までノロノロと向かう。
置かれているバスタオルを見ると、何故か二枚用意されている事に気付き、ハッとする。
まさかコレ、一枚るぅのじゃ?
「ねえ、るぅ!!るーう!!」
隣で扉を開ける音がして、瑠衣斗に声を掛ける。
「んー?何か足りねえ?」
隣から、壁を隔てるように瑠衣斗の声が届く。
「違う!!バスタオル二枚あるんだけど、るぅのじゃないの?」
まだ服を脱いでないし、渡すなら今のうちだ。
そう思った私は、バスタオルを一枚手に取った。
「それもものだから大丈夫」
「…え?二枚とも?」
意味が分からない私は、背の高い目隠しとバスタオルを見比べた。
「とりあえず早く体洗えよ」
「う…うん……??」