「あのクソ親父…」


「ちょっと、私のダーリンをクソ呼ばわりしないでくれる?」

「………」


声のした方へ振り返ると、みんながぞろぞろと戻ってきた。


「あの、おじさん大丈夫ですか?」


ツーンとした瑠衣斗は置いといて、私はおばさんにそう声を掛けた。


「ああ、いつもの事〜。普段2人きりか、由良達ぐらいとしか家に居ないから、今日は特に浮かれちゃったみたい」


「そうなんですか。なら良かった…」


逆に、飲ませすぎてしまったんじゃないか、そう不安に思っていた私は、少しホッとして肩の力を抜いた。


「あいつはどーでもいんだよ。ももこそ、お前は大丈夫なのかよ」


「え?私?大丈夫だけど…」


言い切る前に、隣へとやってきた瑠衣斗は、そのまま腰を下ろした。


そしてそのまま、私の目の前の柱へと視線を向けた。


「ん?どうした?」


「これって、ちっちゃい頃の?」



私が指差した物に、瑠衣斗がパチパチと瞬きを繰り返す。


「あらっ、ももちゃんよく見つけたわね」


おばさんの声に顔を上げ、ふわりとした感覚のまま素直に口を開ける。


「慶兄とるぅの背比べですか?」


「そーよぉ〜。今じゃ2人ともバカみたいに大きくなっちゃって」


近くに来て、懐かしそうに柱をなぞるおばさんの手は、優しく触れている。


「あんなけ親父がでかけりゃ、似るだろうよ」


「親父さんよりでけーじゃん」



笑いながら言う宗太も、お酒が入っているせいか陽気だ。