「親父、部屋で寝ろよ」
「……ももひゃん…」
「もお〜お父さんったら」
ペースが早いので、てっきりお酒が強いのかと思っていた私は、すっかり泥酔してしまっているおじさんを目の前にして苦笑いした。
食事を終えた後、それぞれ片付けてしまうと、居間では晩酌ならぬ飲み会が数時間ほど開催されたのだ。
大の字で寝転んで顔を赤くしたおじさんは、譫言のように私の名を呼ぶ。
それに反応するように、ももちゃんがペロリとおじさんの顔を舐める。
少しお酒の回る心地よさに、ふわふわと意識が揺れる。
「ったく…しょうがねーな」
「ふううぅ〜〜ん…」
「俺も手伝うぞ」
おじさんを抱えるように、肩に手を入れた瑠衣斗と同じように、宗太が手を貸す。
「だははっ、俺足持つわ」
上半身を支えるだけでは無駄だと気付いた龍雅が、足を持ち上げた。
「本当にごめんねえ、あっ、部屋はこっちね」
よっこらせ、と男三人でおじさんを運ぶ姿に、やっぱりみんな男なんだなぁ〜なんて呑気に見送った。
人間、力が抜けた時は、力の入っている時よりも重くなると言う程だし、三人でも十分に大変そうだった。
ぽつんと、ももちゃんと2人きりになってしまった私は、何だかふぅと気が抜けるようだ。
そんなに呑んではいないのに、やっぱり日本酒とあって結構な度数だ。
それにしても、本当に大きなお家……お屋敷だなぁ。
部屋はいくつあるんだろうか。
チラリと何気に目に入った柱に、何かが書いてある。
そっと近付くと、横線が何本か記されており、その横に何かが書いてある。
「慶衣斗…110…瑠衣斗…85…??」
これって……。