ぐっと掴まれた手に、心臓を鷲掴みされたんじゃないかと思う程に驚いた。


そのまま部屋の入り口まで引っ張られると、ぶっきらぼうに瑠衣斗が口を開ける。


「はい、もも」


「いや、その紹介はねーだろ」



宗太の笑い声を合図に、由良さんまでもが笑い出してしまった。


予想もしなかった事に、思考回路が停止してしまった頭を、慌てて動かす。


「あ、あの、初めまして。今日から少しの間お世話になります、唯ノ瀬ももです。よろしくお願いします」



ペコリと頭を下げた私は、再び目を前に向けた。


目の前には、優しく笑う瑠衣斗のお父さんと、お母さんらしき人がみんなの輪に馴染んで座っていた。



「初めまして〜。ヘタレ息子のお母さんです。よろしくね、ももちゃん」



ヘ、ヘタレ……??


「同じくヘタレ息子のヘタレじゃないお父さんです。よろしくね」



「…ヘタレ……?」



その瞬間、一斉に笑いが巻き起こる。


意味の分からない私は、思わず思い当たる人物を見上げた。



ありゃ〜…。



見事に眉間に皺を深く寄せた瑠衣斗は、心底嫌そうな顔を両親に向けている。


引きつる自分の顔を、再びご両親に向けると、2人にニコニコと微笑まれた。


「ヘタレじゃねえし」



ガシガシと頭をクシャクシャにした瑠衣斗は、私の手を掴んだまま部屋に入ると、ドカッと腰を下ろした。