驚いて瑠衣斗を見上げると、その視線に気付いたように目を向ける。


「まぁ……俺のせいか?」


少し困ったような笑みを浮かべ、そのまま視線は前へそらされてしまった。



胸がきしむように痛い。


ドキドキと高鳴る鼓動に、自分が息をしているのかも分からない。


前方を闊歩するももちゃんは、尻尾を大きく揺らしながら軽快に歩く。



何も言えないでいる私に向かって、瑠衣斗が再び口を開いた。



「さすがに親父ら帰ってきてんだろうな〜」



ポツリと言った後、溜め息をつく瑠衣斗に遠慮がちに声をかけた。


「会いたくないの?」


「え?」



ずっと疑問には思っていたけれど、何がこんなにも瑠衣斗をそうさせるのだろう。


私の場合なら分からないでもない。けど………。


「無理…してたりする?」



お姉さんだって、あんなに気さくな人だし、きっとご両親も明るくて気さくなんだろうな。と思う。


「いや…そうじゃないんだけどな」


「じゃあ何で?」


あんまりしつこくしたくはないけど、これから少しの間お世話になる訳だし、何より、あんなに嫌がっていた瑠衣斗が無理してるならそれも嫌だ。


何となく、無理する事で、嫌になってほしくなかった。


「いろいろ…うるさいから…」



ポツリと言う瑠衣斗は、何故か顔がほんのりと赤い。


「……ふ、ふうん…」


「会えば分かる」


「……そっか」


この話はもうお終い。とでも言うように、話を終わらせてしまわれたらさすがに何も言えない。


よく分からないけど、会えば分かるならそれでいいや。と、自分を納得させた。


繋がれた手は、ずっと優しく握られたまま、足の短い私に歩幅を合わせてくれていた。


大きなお屋敷が近づくにつれ、私の緊張は高ぶるばかりだった。


いつの間にか、空に星が瞬いている事に、私は気付きもしなかった。