『それでは、準備ができたようなので登場してもらいましょう』
「お、来るぞ〜」
「俊ガチガチだろうな」
司会者の言葉と共に、拍手と歓声が沸き起こり、一気に血圧が上がったような気がした。
じっと見つめた先にある中庭には、キラキラと水しぶきを反射させて輝く噴水があり、青い芝生が鮮明に見える。
ドキドキと、胸がカウントダウンを始めたように高鳴る。
拍手をする事もしず、じっと扉の先の中庭を見つめていた。
大きな歓声は更に大きくなり、ゆっくりと目の前の景色がスローモーションのように見えた。
キラキラと白い光をまとったような美春が、少し照れたように俯き、白いタキシードをビシッと着こなした俊ちゃんの腕にしっかりと手を絡め、ブーケを片手で握った美春に、心が震えた。
あちこちの席から掛けられる祝福の言葉に、頬を赤く染めた美春が歪んで見える。
そう言えば、さっきは美春の反応を気にし過ぎていてちゃんと見てなかった。
たまに俊ちゃんと目を合わせ、そのたびにはにかむように笑う美春は、もう滲んで見えなかった。
ちゃんと記憶に焼き付けておきたいのに、視界を晴らす事ができない。
頭に軽い重みが加わり、思わず俯いた。
「まじで泣き虫だなあ」
慶兄とは反対に座る瑠衣斗が、頭を撫でながら私をの顔を覗き込んでいたようだが、確認する余裕もなかった。
「頑張ってたもんな、もも」
そんな二人の声に、涙は更に溢れ出てきてしまい、龍雅と宗太が笑う気配も伝わってくる。
――お母さん…。
お母さんも、あのドレスを着た時、笑ってましたか?
お父さんは、もっとカッコ良かった?
幸せ……だった??
「ももぉ〜っ!!」