眠ってしまって大人しくなっていると思っていた私は、簡単に意識を瑠衣斗へと再び向ける事になってしまった。
やけに、瑠衣斗の甘くて爽やかな香りが、濃く香る。
胸の鼓動が、ドキドキと騒ぎ出して抑える事もできない。
動く事もできない私は、手足の動かし方も分からない程、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
ドキドキと加速する胸の鼓動は、全力疾走しているように思えたが、それが瑠衣斗の物と重なっているせいだと気付いた。
「あ、寝た?」
そんな宗太の声が、車内の音楽に混ざって聞こえる。
「うーん…みたい」
多分…振り返って確認したであろう龍雅に、冷や汗が吹き出してきそう。
「てゆーか、俺運転してるからそんな見れねーよ」
「えっ、今更その話しちゃう!?」
「それに見慣れた光景だし」
「ね。つまーんなーい」
そんな会話は、私の耳を素通りした。
お腹に回った腕は、しっかりと私を抱き締めるようにして回され直したからだ。
こっ…こんな状態で眠れません。
ピッタリとくっつけられた背中と、瑠衣斗のお腹に、身動きする事もできない。
意を決して目を堅く閉じてみても、瑠衣斗の感覚がよりリアルに感じられてしまうだけだった。
「……眠れない?」
掠れた小さな声で、耳元で優しく囁かれた言葉に、背中がしなってしまいそうだった。
声も出せない私は、小さく頭を横に振るだけでいっぱいいっぱいだ。
こんな状態ですぐ寝れる程、私図太くありません。
「…もっと……」
…え?もっと?
「触りたい……」