雪解け水らしく、小川の水は本当に冷たかった。
しばらく手をさらしているだけで、冷たさに手が痛くなってきそうだ。
「ちょっと横になっていいか?」
私の返事を待たずに、隣へしゃがみ込んだと思った瑠衣斗は、そのまま私の方へ頭を向けてゴロンと横になった。
長い睫毛が綺麗に伏せられ、影を作る。
サラリと風によって流れる髪に、触れたい衝動に駆られる。
先程まで周りを目隠ししていた濃い霧が、ゆっくりと流れて行き、優しい日差しが瑠衣斗を照らすようだ。
「疲れた?」
「ん〜…いや、気持ち良い」
ジリジリとした日差しではなく、標高が高いせいかぽかぽかと暖かい日差しと、新鮮な空気が確かに気持ちが良かった。
目を閉じてしまっているせいで、瑠衣斗の顔を遠慮なく眺める事ができ、そんな瑠衣斗の顔にトクトクと胸が高鳴る。
体操座りをしたまま、口元を隠すように腕にうずめた。
いつからこんなに、るぅの事――――。
ぽかぽかする日差しに、瞼が重くなってくる。
何も言わなくなってしまった瑠衣斗は、本当に眠ってしまったのかもしれない。
サラサラと流れる小川に、そっと目を向けた。
少し遠くに、家族連れが目に入り、何の気なしにその姿を見つめた。
幸せそうな雰囲気に、少しだけ、羨ましいな。なんて思う。
忘れるわけがない。
――――もうすぐ、またあの日がやって来る。
何だかとても切ないのは、瑠衣斗のせいなのか、それとも違うものなのか、私には分からなかった。