トイレを済ませ、蛇口をひねって手を伸ばす。
とても驚くほど冷たい水に、1人で感動する。
そして、気持ちの良い冷たさにいつもの倍は水に手をさらしておいた。
もう誰も居ないだろうな。と思いながらトイレを出ると、予想通り男性陣が見当たらない。
……薄情な奴らめ。
ゆっくり建物の中を見物しようと思い、トイレからは少し離れた場所にある入り口へ足を向けた。
先程はなかった霧が、今は驚くほど周りを白くし、見晴らしを悪くしている。
「おい、置いてくなよ」
「っひえ!?」
結構な標高に居るんだ。と思った所で、突然声を掛けられて驚いて振り返った。
「何だよ、待ってたのに」
「え!?待ってたの?」
振り返った先には、何だか偉そうに立っている瑠衣斗が、私を見下ろしていた。
「電信柱みたいだね」
「…喧嘩売られてる?」
――そんなつもりないけども。
沈黙を肯定と取ったか分からないが、何だか少しだけムッとした瑠衣斗に背中を押され、一緒に歩き出した。
「ねえ、コレって霧?」
「ん?ああ、そうだよ。ここは日本一標高が高い場所にあるサービスエリア」
「え!!すごい!!」
「これからまだ登るから、雪が残った場所も見れるよ」
自分でも驚く程、素直に気持ちが高ぶるのが分かった。
今、私どんな顔してるんだろう。
楽しそうにしてるのかな?
そう思うのは、目の前の瑠衣斗が笑って私を見ているから。
るぅは、楽しい?
「ちょっと向こうでのんびりするか」
笑顔の瑠衣斗に、素直に頷いた。