「はあ……何か緊張した」
ふぅ、と一息ついた瑠衣斗は、肩の力を抜き、丸く猫背になって頭をうなだれている。
思っている事を簡単に口に出せたら、誰だって苦労しないもんね。
「そんなんじゃ告白なんてできないよ」
胸が一瞬詰まるような感覚がしたが、今は構わずそう口にした。
自分なりに、瑠衣斗を励ますつもりで口にした。
今はそれでいいんだ。
「だよな。でも、いい練習になったよ」
顔だけを持ち上げて、はにかむように笑った瑠衣斗は、何だか幼く感じた。
もう夜でも暑い中、新月に近い月の周りには濃い雨雲が漂い、何だか幻想的だ。
「何それ。私が練習台?高いよ?」
「指導料でも取る気かよ」
何だか少しだけ、打ち解けたような気がする。
自分なりに、思った事を口にした事に少し驚いたと同時に、何だかスッキリとした気分だ。
こんな成長も、慶兄のおかげだなあ……。
本当に、感謝してもしきれない。
背中を押してくれたのだから、私は前に進まなきゃ。
自分なりに、前に進もう。
「くれるならもらっとこうかな」
「ねえよ」
今までのようなくだらないやりとりが、こうしてできる事に幸せを感じた。