「はい、ヘルメット」
渡しながら言うと、瑠衣斗と目が合った。
何の事もないのに、一瞬目が泳ぎ、そのまま目線を外した。
…………あ……あれ?
受け取ってくれたものの、瑠衣斗からの返事がない。
そっと顔を上げて様子を伺ってみると、受け取ったヘルメットに視線を移したままの瑠衣斗が目に入った。
「るぅ?どうしたの?」
何も言わない瑠衣斗に、何が何だか分からないままでいると、ふと瑠衣斗が視線を上げた。
一瞬、何を言うんだろうとドキッとしたが、何だか寂しそうな目に余計戸惑ってしまいそうになる。
「ももさあ……」
ゆっくりと口を開けた瑠衣斗の唇に、釘付けになる。と言うか、目を合わせれない。
「寂しかったり…するのか」
「…え……?」
言われた言葉の意味を理解する事ができず、思わず目を見つめた。
「……何が?」
訳もなく誤魔化そうとする自分に、溜め息が漏れそうになる。
「寂しくないのか?って」
「え…何で……」
きっとそうだ。瑠衣斗は慶兄の事を言っているんだ。
でも、慶兄の事に触れない所が、私に対する瑠衣斗なりの優しさなのかもしれない。
「もう…無理……か…?」