しばらくすると、周りの光が少なくなり、見慣れた住宅街へと入っていた。
段々と自分の家へと近付くにつれ、胸が縮むようだ。
最近では、慶兄の存在によって、寂しさがだいぶなくなっていたようだった。
会えなくても、慶兄が居てくれるという安心感が、私を寂しさから守ってくれていたようで。
でも今日からは、また1人なんだ………。
そう思った所で、そんな思いを打ち消した。
私はやっぱりズルいんだ。もっと強くならなきゃ。もっとしっかりしなきゃ。
じゃないと、慶兄にガッカリされる気がして申し訳ない。
大丈夫。また元に戻るだけ。いつまでも甘えていたらダメだ。
それでも、やっぱり胸に広がる嫌な感覚は、自分の家が目に入った途端、締め付けるように苦しくなる。
流れるように家の前で止まり、瑠衣斗が単車のエンジンを切った。
しんと静まり返った住宅街に、ふぅ、と瑠衣斗の息遣いだけが耳に届く。
「到着」
「うん…ありがとう」
離れてしまうのを惜しむように、ゆっくりと瑠衣斗の腰から腕を離した。
手の中に残った温もりが、離れてしまった事に切なさを生む。
危なっかしく降りると、体制を立て直してヘルメットに手をかけた。
これを返したら、もうバイバイか……。
切なく疼く胸の痛みを無視するように、簡単にヘルメットを外した。