浮いてみたり、沈んでみたり、瑠衣斗と居ると私の気持ちは休まらない。
言いたい事や聞きたい事が沢山あったはずなのに、一緒に居ると一瞬にして頭の中から消えてしまう。
繁華街を少し抜けると、先程までの賑やかだった喧騒から、人もまばらになって一気に寂しくなる。
交通量の多い通りではあるが、繁華街が明るすぎるのか、近くに公園もあるせいか、何だかどんよりと暗い。
いつか、飛び出して辿り着いた公園だと気付くのに、そう時間はかからなかった。
あの時、私はどんな気持ちだったのだろう。
思い返すと、今でも胸が締め付けられる。
忘れるはずもない。今でも答えなんか出ていない。
何となく、どんよりとしたモノが胸を覆うような感覚に、考えていた事を強制終了させた。
「んじゃ、帰るか。送ってく」
「うん。ありがと」
瑠衣斗の単車まで辿り着いた所で、そんな普通の会話を交わす。
ヘルメットを受け取ろうとした私の両手は、宙を舞ったまま視界が暗くなった。
「ちょっとー!!ちゃんと被せてよ!!」
「お、わりーわりー。小さすぎて間違えた」
何をどう間違えたのかはムカつくので、あえて聞かなかった。
顔面いっぱいに被せてもらったヘルメットを勢い良く外すと、目の前に腰をかがめた瑠衣斗の顔があり、直後に身を固めた。
微かに笑っている瑠衣斗に、自分の目が泳ぎまくっているのが分かる。
……えっ
な、なに!?
「ぶっ……マヌケ面…」
「…は!?何それ!!」
「え?マヌケ面の意味?」
「バカにしてんの?」
さっきから遊ばれているみたいだけど、ムカつくけど、こんなやり取りがくすぐったくて嬉しい。
軽く脇腹をつついて反撃してみたが、何の意味もない事も承知の上、そのまま勢い良くヘルメットを被った。
笑いながら単車に跨った瑠衣斗は、単車のエンジンを掛けた。
お腹の底に響く低いエンジン音に、同調するかのように心臓にも音が響いた。