夏希の言葉に、思わずパッと顔を上げた。
穏やかな表情をした夏希は、丁寧に拭き上げているロックグラスに視線を落としたまま言葉を続けた。
「それで気が済むなら、ずっとそばに居ればいいじゃねーか」
「ま、その通りだな。気が済むなら。な〜♪」
「……済む訳ねー……」
夏希と純平の、楽しそうな笑い声の中、心の中で夏希の言葉を繰り返した。
そんな簡単な事、どうして今まで気付かなかったんだろう。
約束した訳でもない。
期限がある訳でもない。
でも、みんなが離れていかない保証なんて、どこにもない。
「ももは?ももだったらどーしたい?」
「えっ、私!?」
突然の夏希の言葉に、思わず声が大きくなってしまった。
まさかここで、私に振られるとは思ってもなかった。
「わ、私…だったら?」
どうしたい…って……どうしたい?
自問自答してみても、答えなんて出なくて、うーんと悩むしかない。
私は、るぅが好き……だけど、どうしたいかと言われても………。
ずっと、そばに居れたらいいなとは思った事…ある…けど………。
「何考えてる」
「えっ!?何っ……ナニか!!」
今度は間近で聞こえた瑠衣斗の言葉に、思わず可笑しな回答をしてしまった。
「そのナニかを言えよ!!」
純平に笑いながら突っ込まれた。