目の前のパフェに視線を落とすと、柄の長いデザートスプーンを握り締めた。
プリンの他には、生クリームとバニラアイスが敷き詰められ、チョコレートがかけられている。
真っ赤なイチゴとベリーなんかも入っていて、彩りも鮮やかで可愛らしい。
一口すくって口に入れると、少し弾力のあるプリンと程よい苦味のあるカラメルソースが、ふんわりと優しい甘さが口いっぱいに広がった。
「……美味しい」
何だかモヤモヤしていた気持ちが、解かれていくようだ。
「手作りなんだぞ〜。プリン」
「えっ!!本当に?すっごい美味しいよ」
見上げた夏希は、ふわりと口元を持ち上げて優しく笑ってみせた。
シルバーの小さな丸い鼻ピアスが、今日も嫌みな程似合っている。
本当に私の周りって、何でこんなに……………みんな料理やらお菓子作りまで上手いの。
「もう慶ちゃんと二人では来ないのか〜?」
「…え……?」
一瞬言われた事の意味が分からず、目の前の夏希を見上げた。
隣では、カチカチとパフェの入っているグラスと、スプーンの当たる音を立てながら、何も言わない瑠衣斗の気配をやたらと感じた。
目の前の夏希は、全てを見据えているようにも思える。
……何だ。全部お見通しか…。
何となく視線を下に目を逸らすと、ふっと顔の筋肉が緩んだ。
「別れたんだ…今日」
「……そか」
たった一言、夏希はそう言っただけだった。
でも、それがありがたかった。