「なあ、まじでどうした?」
先ほどとは打って変わって、心配したような真面目な純平の声が、頭上から降ってきた。
もちろん、瑠衣斗が口を開く様子はない。
今日あった出来事の中で、何かあったかと聞かれたら慶兄の事ぐらいしかないだろう。
慶兄と面識のある純平や夏希にも、もちろん報告するべき事には違いない。
何となく、口を開く事が億劫になってきていた。
言わなきゃ言わなきゃと思えば思う程、まるで鍵でもしてしまったかのように、私の口は固く閉ざされてしまっていた。
「ダーリンと何かあったのか〜?」
「…うん…………う!?」
のんびりとした言葉に、思わず素直に返事をしてしまい、驚いて顔を上げた。
視線の先には、裏から何か小ぶりなパフェを2つ持った夏希が、ゆったりとした足取りでカウンター内に入ってくる所だった。
そのまま純平の隣へと並ぶと、私と瑠衣斗の順で2つのパフェを置いた。
「新作じゃ。食え」
言いながら、デザートスプーンも一緒に並べられた。
「……俺も?」
「俺も」
有無も言わせない口振りでそう言うと、夏希が私に視線を向けた。
「プリンパフェ」
「ぷりん!?いただきますっ」
こうしてたまに、私達は試食をさせられる。
この前来た時は、何故か手の込んだロシアンたこ焼きだった。