その時、タイミング良くドアがコンコンとノックされ、顔を上げてドアのある方へ振り返った。


『着替え済みましたか?』


「あ、はい。どうぞ〜」



私が返事をすると、ガチャリとドアが開き、髪を頭のてっぺんでお団子にした若い女の人が入ってきた。


意志の強そうな切れ長の瞳で、薄い唇とスラリとした身長には、まさしくクールビューティーと言うに相応しいような女性だ。


「あらあら…泣いちゃったんですね」



その女性はニッコリ笑と笑うと、私と美春に近づいて足を止めた。


「すいません。この子よろしくお願いします」



私がそう言うと、その女性はふわりと笑いながら頷いた。


「とびっきり綺麗にして、みんなをビックリさせましょうね」


「よろしくお願いします…」



はにかむように笑う美春がそう答えると、その女性がドレスの裾を持ち、三面鏡へと美春を誘導する。



「美春…じゃあ、私待ってるね」


「え?あ、うん」



鏡越しに美春と目を合わせ、軽く手を振ってから部屋を出た。


私も着替えなきゃ。あんな顔になっちゃったけど…大丈夫かなぁ〜。



美春を心配しながら、慌てて用意しておいた着替えを持ち、私も着替えに行くために軽く走った。


さんさんと降り注ぐ陽射しが、中庭の噴水の水しぶきに反射して、まるで今日の日を祝福しているかのようだった。